生成AIに関する日本の著作権法適用状況の確認メモ

生成AIに関する日本の著作権法適用状況の確認メモ。生成AIの何が問題で何が問題でないか。

はじめに

まず本記事は、現状の日本の著作権法のおいて AI による生成物がどのように扱われているのか、何が問題で何が問題でないか、を整理するために個人的なメモとしてまとめたものであり、何らかの主張に対して賛意や異議を示すものではありません。

また、法律に規定されないような倫理的な問題を無視するものでもありません。

より詳しく正確で総括的な情報は、本記事ではなく下記文化庁のページおよび資料をご確認ください。

お悩みの方は相談窓口もあるので是非そちらから。

概要

下記は例としてイラストを対象とした調査のまとめとなります。

基本的には AI によって生成されたものの侵害行為も著作権法の「類似性」「依拠性」の考えに則って判断されます。

  1. スタイルや絵柄の模倣はOKだが、キャラデザインや構図の模倣はNG
  2. ファンアートは非営利なら黙認されやすいが、商業利用は確実にNG
  3. AI学習は合法だが、生成物の利用は著作権法の影響を受ける
  4. 「〇〇風AIアート」などの商業利用は著作権・商標権・不正競争防止法のリスクが高い
  5. 企業のガイドライン違反は違法ではないが、著作権侵害の根拠になり得る
  6. 表現の自由は保証されているが、違法行為をしていいわけではない

以降ではそれぞれの項目について少し詳しく記していきます。

1. スタイルや絵柄の模倣はOKだが、キャラデザインや構図の模倣はNG

許可される可能性が高いもの

  • アイデア(スタイル・絵柄)の模倣
    • 「アニメ風」「水彩風」「ジブリ風」のような技法・タッチの模倣はOK
    • アイデアや技法は著作権で保護されないため、法律上の問題にはなりにくい

違法に当たる可能性が高いもの

  • キャラクター(服装、髪型、デザイン)の模倣
    • 例:「ドラゴンボールの悟空そっくりのキャラを描く」→ 著作権侵害
    • 例:「初音ミクの髪型・服装を完全再現」→ 著作権侵害
  • 特定の構図の模倣
    • 例:「ジブリの有名なシーンをそのまま描く」→ 著作権侵害
    • 例:「ワンピースの扉絵の構図をそのまま利用」→ 著作権侵害

参照

「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1項第1号)が著作物として保護される。アイデアそのものは保護対象外。

文化庁 - 著作権法の概要

「依拠性」とは、著作権侵害の要件の一つで、侵害者が原著作物を知っており、それを参考にしたことを意味する。

知的財産高等裁判所 - 平成22年(ネ)第10076号

2. ファンアートは非営利なら黙認されやすいが、商業利用は確実にNG

黙認されることが多いもの

  • 非営利目的のファンアート
    • 多くの企業が二次創作ガイドラインを設定し、特定の条件下で許可
    • 例:「任天堂」「ホロライブ」「Cygames」はガイドラインを策定
    • ガイドラインの範囲内であれば、著作権者が権利を行使しない(実質的にOK)

違法・リスクの高いもの

  • 企業が禁止している二次創作
    • 企業が著作権侵害として訴える可能性あり
  • 商業利用(販売・グッズ化)
    • 例:「ドラゴンボールのファンアートをLINEスタンプにして販売」→ 著作権侵害
    • 例:「ポケモンの同人誌を商業販売」→ 著作権侵害(コミケ等は黙認されるが、本来違法)

参照

任天堂は「ニンテンドーキャラクターの利用に関するガイドライン」を公開し、特定条件下でのファン創作活動を許可している。

任天堂 - ニンテンドーキャラクターの利用に関するガイドライン

「同人誌などの二次創作物は、原則として著作権法違反に当たる」と文化庁は説明している。ただし、権利者が黙認している場合も多い。

文化庁 - 著作権法に関するよくある質問集

3. AI学習は合法だが、生成物の利用は著作権法の影響を受ける

許可されるもの

  • AIの学習(トレーニング)
    • **日本の著作権法第30条の4「情報解析の自由」**により、著作権者の許可なく学習しても違法ではない
    • 例:「ネット上のイラストを学習に利用する」→ 合法
    • 例:「ジブリの画像を大量に学習」→ 合法(ただし生成物には注意)

違法・リスクの高いもの

  • AIによる生成物の利用
    • 生成された作品が元の作品と類似している場合、著作権侵害になり得る
    • 例:「鳥山明風AIイラストを販売」→ 著作権侵害
    • 例:「ジブリの背景そっくりのAI画像を使ったゲーム」→ 著作権侵害の可能性
  • 「〇〇風AIイラスト」「〇〇スタイル」表記
    • 依拠性が認められるため、著作権侵害と判断される可能性が高い
    • 例:「鳥山明風AIアート」→ 著作権+不正競争防止法違反の可能性
    • 例:「ジブリスタイルのAI背景モデル」→ 商標権の侵害の可能性

参照

著作権法第30条の4では「著作物は、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」と規定している。

著作権法 | e-Gov法令検索

文化庁の見解では「AI生成物が著作物となる場合でも、既存の著作物との類似性及び依拠性が認められる場合、当該生成物の生成や利用といった行為は、既存の著作物の著作権侵害となり得ます」としている。

文化庁 - 著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について

4. 「〇〇風AIアート」などの商業利用は著作権・商標権・不正競争防止法のリスクが高い

リスクの高い利用方法

  • 特定のクリエイターやブランドを連想させる表現の商業利用
    • 「鳥山明風」「ジブリ風」などの表記を使用した商業利用は複数の法的リスクがある
    • 著作権侵害だけでなく、商標権侵害や不正競争防止法違反の可能性も
  • 特定のスタイルやブランドを明示的に使用したAIモデルの販売
    • 例:「ジブリスタイルAIモデル」「ディズニー風生成AI」などの販売

参照

不正競争防止法第2条第1項第1号では「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」を不正競争として定義している。

不正競争防止法 | e-Gov 法令検索

「指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用」を侵害とみなす行為と規定

商標法 | e-Gov 法令検索

5. 企業のガイドライン違反は違法ではないが、著作権侵害の根拠になり得る

ガイドラインの法的位置づけ

  • 企業ごとのガイドラインが示す「許可範囲」なら、法的リスクがない
    • 例:「ホロライブのガイドライン内でのファンアート」→ 問題なし
    • ガイドラインは著作権を放棄するものではなく、「一定範囲で許可」するもの
  • ガイドライン違反=違法ではないが、著作権侵害の根拠になり得る
    • 「ガイドライン違反だから違法」ではなく、「ガイドラインを守らなかったため、著作権侵害を理由に訴えられる」可能性がある
    • 特に倫理的な問題(成人向け・暴力的表現)は厳しく制限されることが多い
      • 例:「ポケモンの成人向けファンアート」→ 任天堂のガイドライン違反
      • 例:「ホロライブの二次創作で暴力的表現」→ カバー株式会社のガイドライン違反

参照

カバー株式会社(ホロライブ)のガイドラインでは「当社の許諾無く、キャラクターの二次創作を用いて営利活動を行うことを禁止します」「公序良俗に反する表現、キャラクターの品位を損なう表現等はお控えください」と定めている。

カバー株式会社 - 二次創作ガイドライン

著作権法第63条では「著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる」と規定し、ガイドラインはこの「許諾」の範囲を定めるものと解釈される。

著作権法 | e-Gov法令検索

6. 表現の自由は保証されているが、違法行為をしていいわけではない

表現の自由の範囲

  • 憲法第21条により、「表現の自由」は認められている
    • 国家権力が事前に「この表現を禁止」とすることはできない(検閲の禁止)
  • ただし、表現の自由には責任が伴う
    • 表現の自由は「何をしてもOK」ではなく、法律の範囲内でのみ保証される
    • 表現の結果、違法行為となれば罰則を受ける
      • 例:「著作権侵害と知りつつ二次創作を販売する」→ 違法
      • 例:「名誉毀損と知りつつ他者を誹謗中傷する」→ 違法
  • 「違法行為を認識し、それを受けるならOK」ではない
    • 法的責任を負う覚悟があっても、違法行為をしてよい理由にはならない
    • 表現の自由があるからといって、著作権侵害や公序良俗に反する行為が許されるわけではない

参照

集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない

日本国憲法 | e-Gov法令検索